深部静脈血栓症/肺塞栓症
(エコノミークラス症候群)
深部静脈血栓症/肺塞栓症とは
静脈は、足先から心臓に向かって血液が戻る通り道ですが、長時間同じ姿勢で過ごすと、足の深いところにある静脈内に血栓(血の塊)ができてしまうことがあります。これを「深部静脈血栓症(DVT)」と呼びます。DVTが起こると、血液の流れが滞ることで足に急なむくみや痛みが生じます。
さらに、この血栓が血流に乗って心臓を経由し、肺の動脈へ移動して血管を詰まらせてしまうと「肺塞栓症(PE)」という病気になります。これは突然の息苦しさ(呼吸困難)や胸の痛みなどを引き起こし、重症化すると命に関わることもある大変危険な状態です。
これらを合わせた疾患概念を「静脈血栓塞栓症」と呼びますが、一般的には「エコノミークラス症候群」という名前で広く知られています。飛行機などで長時間座った姿勢のまま動かずにいることでDVTを発症し、それがPEを引き起こす病態です。とくに2004年の新潟中越地震などの災害時には、車中泊での避難生活中に肺塞栓症を起こして亡くなる方が多数報告され、大きな社会問題となりました。
深部静脈血栓症/肺塞栓症を
起こしやすい人は
以下のような要因がある方は、血栓ができやすく特に注意が必要です。
- 高齢者
- 下肢(足)の手術後
- 骨折等のけが
- がん
- 肥満(肥満は静脈血栓症の極めて重要な危険因子です)
- 経口避妊薬(低用量ピルなど)の使用
- 長時間テレビを見るなど、座りっぱなしの生活習慣
また、生まれつき血液が固まりやすい「先天的な凝固異常」がある場合も、血栓ができやすいため注意が必要です。
深部静脈血栓症/肺塞栓症の
検査について
この病気が疑われる場合には、画像検査として体への負担が少ない「下肢静脈エコー(超音波検査)」を行って足の血栓の有無を調べたり、肺塞栓の診断に非常に有効な「造影CT検査」を行ったりします。
また、血液検査で「D-ダイマー」という数値を測定することもあります。この検査は「感度が高い(見逃しが少ない)」という特徴があり、数値が基準より低く「陰性」であれば、血栓症の可能性をほぼ否定できます。
ただし、「特異度が低い(他の理由でも数値が上がることがある)」ため、数値が高い「陽性」であっても、それだけで血栓症だと確定診断できるわけではなく、エコーやCTなどの結果と組み合わせて総合的に判断します。当院では、この「D-ダイマー」を院内で至急測定できる体制を整えており、疑わしい症状がある場合にはその日のうちに結果を確認し、迅速に対応することが可能です。
深部静脈血栓症/肺塞栓症の
治療について
血栓を溶かしたり、新しくできるのを防いたりするために「抗凝固薬(血をサラサラにするお薬)」を用います。
以前はヘパリンの点滴やワーファリンという飲み薬が主流でしたが、現在では食事制限(納豆や緑黄色野菜の制限など)がなく管理がしやすい「DOAC(直接作用型経口抗凝固薬)」という新しい飲み薬を使用するのが一般的です。
重症の場合には、血栓を強力に溶かす「血栓溶解療法」や、酸素投与、一時的に心臓や肺の働きを助ける「補助循環装置」の使用が必要になることもあります。 片足の急なむくみや痛み、突然の息苦しさなどの症状がある場合は、命に関わる可能性もあるため、決して様子を見ずに早急に医療機関を受診することを強く推奨いたします。
